声がかすれるメカニズムと原因
のどには空気の通る喉頭と飲食物が通る咽頭があり、声を出すための声帯は喉頭の中央部にあります。声帯はヒダを振動させて声を出していますが、炎症などが起こると振動に影響が出て声がかすれます。声のかすれは嗄声と呼ばれています。
声のかすれが起こる原因
- 声の出しすぎ
- 喫煙
- 飲酒
- 加齢による声帯萎縮
- 風邪による炎症
- 声帯ポリープ
- 声帯結節
- 喉頭がん
- 甲状腺がん
など
声帯ポリープ
声の酷使によってできる良性のできもので、話している時に息が漏れるように感じたり、やや低音になる、話している途中で声が出なくなるなどの症状が現れます。大きなポリープは手術が必要になります。かなりまれですが、ポリープが大きくなって息苦しさや呼吸困難が起こる可能性もあります。発声法によって負担が大きく変わってくるため、負担の少ない発声法を習得することが再発防止に役立ちます。
声帯結節
ポリープと同じように声の酷使によって起こります。結節はペンダコのようなものであり、粘膜の下に体液がたまったり線維化が起こったりで発症します。高い声を出す女性にやや多く、小児男子にもよくみられます。小児結節は成長とともに解消するケースが多いため、経過観察で様子をみていきます。成人の声帯結節では手術が必要になることも多くなっています。
反回神経麻痺
反回神経は、のどの周辺をコントロールしており、ここにダメージを受けて声帯がうまく開閉しないようになることがあります。食物が気管に入る誤嚥を起こしやすくなるため、高齢者の場合には肺炎のリスクが高まり注意が必要です。また、めったにないことですが、声帯がぴったり閉じた状態でマヒが起こり、呼吸困難になる可能性も指摘されています。反回神経麻痺には、腫瘍やがんがかかわっている可能性があるため、専門医による検査を受けて早急な治療を受けるようにしてください。
声帯萎縮
声帯麻痺や声帯溝症といった病気や加齢によって声帯が萎縮し、うまく閉じることができなくなります。それにより声が出しにくくなり、発声も弱くなってしまいます。声帯溝症は粘膜の縁に溝ができる病気で、炎症から生じるケースもありますが、先天的なものも存在します。
喉頭がん
耳鼻咽喉科で最も発生率が高く、自覚症状なくリンパ節に転移を起こすケースも多いのですが、初期症状に声のかすれが起こることもあります。そこで、当院では2週間以上嗄声が続いているケースでは喉頭内視鏡で喉頭がんの有無を確認しています。飲酒や喫煙との関連性が高いことが指摘されているため、声のかすれが起こったら受診してください。
声のかすれ、声が出にくい場合の治療
声帯ポリープ
発声を控え、炎症を抑える治療を行い、声帯に負担をかけない発声法をおぼえて再発を防止します。ポリープが大きいなどで改善しない場合には、外科手術をおすすめしています。
声帯結節
ポリープと同様の治療法です。
反回神経麻痺
重大疾病が原因となっている場合があるため、CTスキャンや内視鏡検査で原因を特定し、原因となっている病気の治療が最優先です。
声帯萎縮
声帯にアテロコラーゲンや自家脂肪などを注入して委縮を修復する外科手術が可能です。声の出し方をマスターする音声治療も重要になってきます。
喉頭がん
発見しやすく早期治療により完治も望めます。治療では、生活の質を大きく左右する発声・飲み込み・呼吸機能の温存を重視します。症状の程度やライフスタイルなどに合わせて、吸入や投薬による保存的治療、声の出し方を指導する音声治療、外科的手術などを組み合わせた治療方針を立てていきます。